2008年09月08日

すぐ傍にある絶望と希望〜「トウキョウソナタ」(黒沢清監督作品)

こんなの観たことない、それなのに親近感がある。「トウキョウソナタ」は、黒沢清にしか撮り得ないホームドラマだ。「希望」を示したとされる美しいラストさえ、陰りが忍び寄っている。実は彼らは死に絶えていて、それは天上での出来事ではないか。そんな気さえした。
近作では「アカルイミライ」、さらには「大いなる幻影」…これらの作品が示した先の物語。「トウキョウソナタ」には、そんな印象がある。絶望と希望のはざまを、彼らはゆらゆらと行き来する。冒頭部分に、リストラされた父親が、街をさまよい歩くシーンがある。非現実的だ、けれども何て映画らしいんだ、と感嘆させられた直後に、「いや、こんなシーンには日々遭遇している。忘れていたか、目を背けていたかに過ぎない」と気付いた。
不快で不安を掻き立てる現実を、わざわざスクリーンで再確認したいと思う人は少ないだろう。ただし、映画として捉え直された身近な世界は、私たちを不思議に引き付ける。テレビであふれる情報番組は、たくみに毒を抜き、不快なもの・解決すべき諸問題は、すべて自分とは無関係の遠い出来事として描く。実はそれらは、すぐ脇にひそんでいるというのに。
黒沢監督が描く家族たちは、問題だらけ、綻びだらけだ。それでも私たちは、目を背けられない。親近感と、ひりひりとした痛みを抱きつつ、彼らの行く末を見届けずにいられない。
映画を観ることは、自分を、自分が生きる世界を見つめ直すこと。「トウキョウソナタ」は、そんな当たり前すぎることを、あらためて実感させてくれる。

〜〜〜〜〜
「トウキョウソナタ」
監督:黒沢清
脚本:Max Mannix、黒沢清
出演:香川照之、小泉今日子、井之脇海、小柳友、津田寛治、役所広司
posted by staff at 18:53| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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