突如事件に巻き込まれ、恋人を失い、自身も重傷を負ったヒロイン。はじめは護身のために手にしたはずの銃が、次第に彼女をエスカレートさせてゆく。そんな彼女に近づいていく刑事は、彼女がいくつもの事件に関わっていると感じながらも、親近感を強めていく。法の番人としての職務に対するもどかしさも相まって、彼もまた、悩み、ゆれる。(刑事と犯罪者の間でそんなことはありえない、刑事に私情は禁物だ、私的関係と切り離すべきだ、なんていうのは野暮だ。現実では避けるべき状況に身を落としてこそ、物語は光を放ち、その生々しさに私たちは引き込まれるのだ。)
彼女たちの関係はもちろん、ニューヨークという街のあちこちで繰り広げられるやり取りは、間接的であり、一方通行だ。時にはすれ違い、空中崩壊する。ニール・ジョーダン監督は、鏡やガラスに映る姿とその視線の絡まり合い、ラジオの音声を双方向性(DJであるエリカの語りが、刑事が聞き入るラジオのスピーカーにスライドされる)、異なる人物による同アングルのなぞり直し(第2の事件直前のエリカの眼を店の陳列棚越しに捉えたのと同様に、事件捜査に訪れた刑事の眼を捉える)などを駆使する。言葉を介さずに交わされるコミュニケーションは、時に深く相手に響くが、その消極性とあいまいさゆえに、自分自身への問い掛けともなる。
相手に伝えたいと思っても、きちんと伝えられるのか、受け入れられるのかという不安がつきまとい、彼女たちは踏み出せない。言葉による制止もむなしく事件に巻き込まれたエリカが、ラジオの電波にのせて心情を吐露する姿は、あまりにも痛々しい。その一方で、一線を越えた彼女をそっと気遣う隣人の言葉は、ありふれているのに、あたたかく、胸をしめつける。
エリカが、伝えたい相手に、伝えたいことをまっすぐ伝えられるようになる日。それこそが、エリカの闇が晴れる第一歩、なのかもしれない。
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「ブレイブ・ワン」
監督:ニール・ジョーダン(「クライング・ゲーム」「ことの終わり」「ギャンブル・プレイ」)
出演:ジョディ・フォスター、テレンス・ハワード

