せんだいメディアテークでの成瀬監督特集もあと3日。
せっせと足を運んでいるわりにまだ5作品目。しかし、5作品だけでも多くのものを得たように思う。なぜなら書きたいことが山ほど出て来てしまうから。
この企画は単純に製作年順に上映されているわけだが、いよいよ戦後に突入。戦前の温かみ溢れる作品で「小津は二人要らない」といわれ不遇な時を過ごし、戦後、林芙美子モードのような重い男女のテーマをこれでもかと対峙し見据える職人技を発揮したそんな成瀬の真骨頂がこれから見られるわけです。
『晩菊』は1954年、名脇役といわれた杉村春子が唯一主演をはった元芸者4人の物語り。金貸しを営むおきんの杉村春子は主演といっても、5:2:2:1くらいで4人で割っていて「主演…?」といった感じ。放浪記が自伝的作品といわれる
林芙美子原作だけにどこまでも内容はディープ。101分と決して長くないのに時がふた月ほど経ったというか、なんだか老け込んだ気になった。
さて。いろんな想いが巡って何を書いたらよいか迷うが「手紙とロマンス、その行方」とでもしよう。
元愛人からおきんに手紙が届く。金貸しをしているおきんは厳しい取り立てをしゃきしゃきと橋田寿賀子ドラマばりの口調でこなし、昔なじみの芸者仲間からも疎まれているが、この時ばかりははしゃいだ表情を見せ、大事そうに着物に懐中する。そして若かりし頃の彼の写真をそっと取り出し、うっとり眺めて、また箪笥にしまうのだ。
ここで思い出したのが「仙台箪笥」。仙台箪笥は惚れ込んでいる民芸家具のひとつであるが、
専門店を見に行った際、カラクリ箪笥というのを教えて頂いた。つまり、外からはわからない隠し場所みたいなものが箪笥の中に仕込まれているのである。年配の方が亡くなられると箪笥のそういった場所から遺品が出てきたりするんだそうだ。
「じゃ、昔のお金とか宝石とか出てくるわけですね」
と誠に現金な私の質問に店員さんは
「いや、おじいさんやおばあさんのラブレターなんかが出てくるんですよ」
と笑いながら答えてくれた。
いやー、ちょっといい話じゃないですか!そういう大事なものをしまう場所にそっと仕舞われた恋文。いっそ候文(そうろうぶん)くらいいっちゃっていて欲しい。ロマンス溢れますねぇ。
と、映画のストーリーにもそんなロマンスを期待したがロマンスどころか、会ってしまえば、熱い情も冷め切ったシラけた二人。そのシラけた二人の気まずいムードを細かく演出し、無駄のないカメラワークがとらえる。
もしまだ愛溢れる二人だったら、成瀬監督はどんな演出をしてくれたのだろう。そして私なら?そんなことを考えた。
この映画の面白いもうひとつの点は今流行りの「負け犬論争」が垣間見えるところである。
「男と子供は逃げちまうけど、お金は裏切らないからね」
VS
「苦労はしたけどさ、子供だけは産んで、ホントよかったよ」
もちろんどっちがいいなんて結末はない。林芙美子は、成瀬はどっちを正解というのだろか?
とにもかくにも、深い深い映画『晩菊』。秋の夜長にピッタリであった。
jun
posted by staff at 00:57|
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成瀬巳喜男
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